ルノーの新エンジンは、ディーゼルの代わり?

ルノー関連の記事

ルノーの新エンジンが、ディーゼルの代わりである可能性を検証しました。ルノーの新型エンジンに興味のある方は、ぜひご覧ください。エンジンの特性について詳細に分析しただけでなく、ダイムラーとの関係にも言及しているからです。

スポンサーリンク

なぜルノーの新エンジンに注目するのか?

私はルノーメガーヌ2RSのオーナーなので、ルノーの情報は頻繁にチェックしています。ある時、フランスとイギリスのサイトをチェックしていると、ガソリンの新型エンジンが各車種に順次採用されていることに気付いたのです。

それが、TCe115、TCe140、TCe160の3種類でした。最初は、「なんでわざわざ新型エンジンを作ったんだろうか?」と疑問でした。なぜなら、すでにTCe120、TCe130という比較的新しいエンジンがあるからです。

そこで、なぜ新型エンジンが登場したのか、詳しくチェックしましたのでご紹介します。

ルノーの新型エンジンのポイント!

それでは、ルノーの新型エンジンの、ポイントを詳しく見ていきましょう。

エンジンスペックを比較してみよう

まず、旧型エンジンと新型エンジンのスペックを比較してみます。

◎旧型エンジン(燃費は推定)

エンジン名 排気量 馬力 トルク 燃費
TCe120 1.2L(1197cc) 120HP 205Nm/2,000rpm 18.87km/L
TCe130 1.2L(1197cc) 130HP 205Nm/2,000rpm 18.40km/L

◎新型エンジン(燃費は推定)

エンジン名 排気量 馬力 トルク 燃費
TCe115 1.3L(1330cc) 115HP 220Nm/1,500rpm 19km/L
TCe140 1.3L(1330cc) 140HP 240Nm/1,600rpm 19km/L
TCe160 MT 1.3L(1330cc) 160HP 260Nm/1,750rpm 19km/L
TCe160 EDC 1.3L(1330cc) 160HP 270Nm/1,800rpm 19km/L

◎参考:ディーゼルエンジン(燃費は推定)

エンジン名 排気量 馬力 トルク 燃費
dCi110 1.5L(1461cc) 110HP 260Nm 27km/L
dCi130 1.6L(1598cc) 130HP 320Nm 25km/L
dCi165 1.6L(1598cc) 165HP 380Nm 21.74km/L

新旧ともに、いわゆる低排気量ターボの、燃費を強く意識したエンジンです。低回転から最大トルクが出続けるという特性も共通しています。しかし、このように比較してみると、新旧で明らかに違うところがあるので、その点についてさらに深く見ていきましょう。

新型エンジンは、排気量がわずかに増えている。

ルノーの新型エンジンは、排気量がわずかに増えました。たったの133ccですが、排気量が大きくなったのは間違いありません。しかし、後から説明する出力特性を考えると、決して小さい変更ではないようです。

また、ヨーロッパは本来なら1.2L、1.4L、1.6Lと200cc刻みにするはず(おそらく税制上の関係から)ですが、1.3Lという特殊な排気量になっています。その点からも、1.3Lにすることに大きな意味があると考えられるのではないでしょうか。

一時、1~1.2L 程度の低排気量ターボというのが一つの流れになりましたが、ごく最近の研究では、排気量がある程度あったほうが高効率なのだそうです。そのような流れもあって、排気量を少し大きくしたのかもしれませんね。

新型エンジンは馬力が大きく、種類も増えた。

ルノーの新型エンジンは馬力が大きくなり、バリエーションも増えました。以前のエンジンでは、120・130馬力の2種類でしたが、新型エンジンでは115・140・160馬力の3種類になっています。ちなみに、以前あった90馬力は0.9Lで3気筒の別物です。

排気量が1.3Lで同じなので、ターボの利き具合によってチューニングを変えているのかもしれませんね。日常の使い方では115馬力でも余裕でしょうが、160馬力のエンジンであれば、結構スポーティに走れそうなので興味深いですね。

エンジンそのものは同じだと思われるので、チューニングによるパワーの違いで、価格差をつけるわけです。おそらく、コストは大きく違わないと思われるので、商売としてはなかなかうまいんじゃないでしょうか。

新型エンジンは、トルクがとんでもなく大きい。

ルノーの新型エンジンで、何と言っても驚異的なのが、トルクがとんでもなく大きいという点です。最初の比較表ですでにお気づきだと思いますが、旧型が205Nmなのに対して、新型では220~270Nmと非常に大きいです。

ザックリ言うと、トルクと排気量はだいたい数字が合うので、NAの2.2~2.7Lに相当するということになります。いくらターボで過給すると言っても、1.3Lがベースですから、排気量が倍以上になる計算です。

一般的にターボは、排気量を1.5倍相当にしたときと同等の出力を発揮します。したがって、例えば1.2Lなら1.5倍の1.8L相当になります。なので、多くの1.2Lターボは180Nm前後のトルクを出します。TCe120・130は205Nmだから、1.7倍ぐらいですが。

このように、やたらとトルクが大きいということもあって、必然的に馬力も大きくなるわけですね。

これはきっとディーゼルの後釜だ!

なぜ、ここまでトルクを大きくするんでしょうか? それは、ディーゼルエンジンの後釜として考えているからではないでしょうか。例えば、ディーゼルエンジンで260Nmのトルクを出すためには、排気量が1.5Lほど必要です。しかも、110馬力程度しか出ません。

ガソリンの新型エンジンであれば、160馬力で270Nm(EDCの場合)なので、こちらの方が大出力だと言えます。出力的には、完全にディーゼルを置き換えられます。しかし、ディーゼルの意味は、低燃費と二酸化炭素が少ないことにあります。

さすがにその点は、ガソリンでは及ばないようですね。それでも、ディーゼルで160馬力を出すと、燃費はガソリンエンジンと比較して、さほど変わりません。トルクはハッキリ言って過剰ですから、馬力ベースで考えれば燃費差はないと言えそうです。

ディーゼルは初期費用が高額(約30万円高)なので、その分を燃費で回収できないことを考えると、圧倒的にガソリンの方が得だということになりますね。つまり、十分ディーゼルとの置き換えに耐えるわけなんです。

なぜディーゼルの後継が必要なのか?

ところで、なぜディーゼルの後継が必要なのかというと、ヨーロッパでは急速にディーゼル離れが進んでいるからです。多くのメーカーがディーゼルの開発を中止しているようですが、だからと言ってすぐに電気になるわけでもありません。

したがって、ディーゼルに代わるエンジンが必要になります。すると、ガソリンエンジンで代用するしかないわけです。ちなみに、ルノーの提携先であるダイムラーと、共同開発ということになっていて、ベンツにも搭載されるエンジンなんですね。

ダイムラーもディーゼルを縮小してガソリンエンジンにするようなので、やはり新型エンジンが重要なポイントです。どうやら、今後はガソリンエンジンを高トルクにすることで、ディーゼルと置き換えるというのが、新しい流れになりそうです。

まとめ

いかがでしたか?

ルノーの新型エンジンが気になったので分析してみましたが、ディーゼルからの置き換えを図ろうとしているのは明らかです。最近の欧州は不正発覚後、ディーゼルを嫌い始めています。排ガス対策を強化すればよいだけですが、この流れは止まりそうにありません。

ヨーロッパの車の使い方を考えると、ハイブリッドや電気がすぐに普及するとも思えませんので、やはり代替となるガソリンエンジンが重要です。このようなことから、限りなくディーゼルの特性に近いガソリンエンジンがしばらく幅を利かすのではないでしょうか。

今後、他社も追随するようなことがあれば、間違いなくその方向だと言えそうですね。

以上、「ルノーの新エンジンは、ディーゼルの代わり?」と題して紹介しました。